ステップ1 心構え

「安全な食品」を作ろう

HACCP方式を含む「食中毒予防」「衛生管理」の重要性は、みなさんご存知の通りです。その食中毒予防・衛生管理のゴールを一言で表すと、どういうことでしょうか。

衛生管理については、いろいろな考え方や手段はあると思いますが、ゴールは一つです。

それは、「安全な食品を作る」こと。

そのためには、あなたが「安全な食品」を作る大事さ、その怖さ、HACCPを導入する理由を理解し、「安全な食品」を作るための具体的な方法を実行することが必要不可欠です。

その「安全な食品」を作るためのあなたの「姿勢」、いわゆる「心構え」を学んでいきましょう。

【あなたの会社が進む道はどちらでしょうか?】

「安全な食品」をしっかり作ることで得られる効果

上の図にあります通り、食中毒の予防、異物混入の防止、HACCPの遵守など、衛生面においてしっかりと対策をおこなっていれば、お客様から信用を獲得し、より多くのお客様から支持されるようになります。

お客様の支持は次第にブランドとして定着し、人気のお店として売上を伸ばすことができるようになります。

売上が伸びれば、多くの利益を生み出すことができるため、会社を成長させたり従業員の給料を上げたりすることができるようになりますね。

従業員のやる気が高まれば、更なる会社の発展に期待ができ、新たな雇用を生み出すなどといった社会貢献もできるようになるのです。

安全をしっかりと保障することにより、健全な会社として信頼が得られるため、HACCPを遵守することは大きなメリットとなるわけです。

「安全な食品」の優先度を下げた結果起きること

しかし、その一方で衛生面でのリスクを甘く見たり、HACCPの遵守を怠たったりしてしまうと、食品の事故に繋がりお客様からの信用を失ってしまいます。

食品の事故により損害賠償が発生しますが、保険に入っていたとしても全てをカバーできるわけではないため、多額の損害賠償金が発生することになります。

この状況を打破するためには売上アップが必要不可欠となりますが、事故による風評被害などにより信用を失っているため、収益は大きく下がってしまうことになります。

その結果、利益を確保できなくなってしまい、お店は資金繰りが悪化して倒産や廃業、従業員の方々は給料が下がる、失業してしまうなどといった末路を辿ることとなってしまいます。

お客様の信頼を得て良好な環境を築いていくのか、それともお客様の信頼を失って倒産や廃業の危機を迎えてしまうのか、食品を作る会社の社長をはじめ、会社で働く皆さん一人一人の日々の行動に掛かっているのです!

【そもそもHACCPとは何なのか?】

それでは、この講座の大きな柱となる「HACCP」についてご紹介したいと思います。

「HACCP」とは、安全な食品を作るための仕組みのことであり、以下のように5つの単語の頭文字から成り立っています。

Hazard Analysis(危害要因分析) and Critical Control Point(重要管理点)

このように、HACCPとは、食品事業者自らが、食中毒や異物の混入などといった危害要因をしっかりと把握したうえで、原材料の入荷から製品の出荷に至る全行程の中において、危害要因をなくしたり減らしたりできるように工程を管理することを言います。

これは製品の安全性を確保するための衛生管理手法であり、食中毒を未然に防ぐことが目的となっています。

少し言葉が難しいと思われたかもしれませんが、覚えやすく文字を充ててみると、

出典:沖縄県 保健医療部衛生薬務課ホームページ

H⇒ほんとに

A⇒あぶないところは

C⇒ちゃんと決めて

C⇒チェックして

P⇒ペンで記録する

という意味となります。

今までの衛生管理では、検査や施設などの物の管理だけでしたが、それに加えて清掃などの作業の管理が重視されるようになります。

「作業の管理」と聞くと難しそうに感じられますが、特別なことをするわけではありません。

例えば食中毒事故の原因の一つであるノロウイルスは、ノロウイルスが付着しているヒトの手から食品に伝染ってしまいます。

つまり、例え食器や包丁、まな板に問題がなかったとしても、「手を洗う」という作業を怠ってしまうと食中毒が起きてしまうわけです。

人の作業をしっかりと管理することで、食中毒を未然に防いでいく、これが「作業の管理」の本質なのです。

お店の営業許可は主に施設面における基準をチェックしていますが、人の作業については基準がありませんでした。

人の作業が食中毒の発生要因になってしまうことが明らかとなってきましたので、国は法律を変えて人の作業を管理する「HACCP」を導入したわけですね。

「作業の管理」においては、作業の見える化が重要ですので、「衛生管理計画」を作成しなければいけません。

そして従来の衛生管理は継続したうえで、「衛生管理計画」を実行して記録していけば良いのです!

食品に対するお客様(消費者)の期待

食品に対する現在の消費者動向・消費者心理

今度は消費者、つまりお客様の立場から考えていきたいと思います。

消費者、つまりお客様は、食品を作る人たちに対してどのような期待を抱いているのでしょうか。

お客様は、食品を提供している皆さんのことをプロだと認識しており、安全な食品を作るために十分な安全衛生管理がおこなわれていることは当然だと思っているはずです。

例えばレストランで、出された料理に対して「これは安全ですか?」と聞いてくるお客様はいないと思います。

つまり、安全なもの、安心できるものを提供するのは至極当たり前のことだと思っているわけです。

最近は、「安全」に対して消費者は特に高い意識を持っています。

以前であれば、品質が良くて価格が安いものを選ぶ傾向にありましたが、今は品質や価格はもちろんのこと「安全性」を重視する傾向にあります。

しかも「安全性」の優先順位は品質や価格よりも高くなっています。

例えば野菜であれば、品質や価格も大事ですが、それよりもどこで作られたのかが重視され、値段が上がったとしても中国産よりも県産や国産の野菜の方が売れているのです。

消費者が安全性を重視しているにも関わらず、食中毒など食品を提供する側が裏切る行為をしてしまうと、その代償は計り知れません。

食中毒事故が起きると・・

事業所の社長は書類送検され、多額の賠償金を支払わなければならなくなりますし、被害者となった消費者も命を落としたり、後遺症が残ったりと、大きな傷痕を残すことになってしまうのです。

お客様は、会ったことがないにも関わらず、私たちを信頼して食品を買って食べています。

信頼や安心があって初めて成り立つことなのであり、安全な食品を提供することは、食品を買う人が望んでいる「最低限の要求」であると言えます。

「安全な食品」であることは、一番大事な約束

「提供する食品が安全である」ことは、消費者との一番大事な約束なのです。

食品を提供する仕事というのは、「命を預かる仕事」であるという意識を持つことが重要です!

「安全な食品」ってどんなもの?

先述した通り、安全な食品を提供することは、消費者との一番大事な約束です。

では、一体「安全な食品」とはどんなものなのでしょうか。

「安全な食品」とは、以下の3つであると言えます。

「安全な食品」の3つの条件

①作り方のルールを守った食品

②食中毒を起こすバイキンがついていない食品

③余計なもの(異物や化学物質)が入っていない食品

それでは順番に、それぞれがどんな食品なのかご紹介していきたいと思います!

【①作り方のルールを守って作られた食品】

作り方のルールとは衛生管理計画のことであり、これを実行することで安全衛生管理ができるようになります。

包丁の使い方やまな板の洗い方など、様々な作業に必要な手順が書かれていますが、中にはもっと簡単で効率の良い方法があると感じる項目があるかもしれません。

しかし、衛生管理計画に記されたこととは、作業の効率だけでなく安全性も考慮されています。

従って、ルールを代えたいと思った場合は、くれぐれも勝手に代えるのではなく、まずは上司に必ず相談するようにしましょう。

【②食中毒を起こすバイキンがついていない食品】

食中毒を引き起こすバイ菌とは、意外に特別な環境でなくても存在しています。

例えばかつて雪印乳業が引き起こした食中毒の原因は、成人4~5人に1人持っていると言われている「黄色ブドウ菌」でした。

このように、食中毒を起こすバイキンというのは、思っているよりも身近にいます。

過渡に恐れる必要はありませんが、バイキンとの上手な付き合い方を覚えていきましょう!

【③余計なもの(異物や化学物質)が入っていない食品】

提供する食べ物に余計なものなど入ってはいけないのは当然のことですが、食品に対する意識は高まっています。

実は、食品クレームにおいて最も多い項目は「異物混入」です。

例えば、髪の毛が異物として入っていたとしても、加熱して殺菌されていれば、食中毒になることはりません。

しかし、髪の毛が入った食品は、例え殺菌されていたとしても食べることはできないのです。

つまり、異物混入とは、食品の安全性を落とすだけでなく、同時に品質を損なうものです。

食品に入る余計なものには、アレルギー物質や毒など、目に見えないものもあります。

異物や化学物質が入ることがないように、気を付けていきましょう!

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