【HACCP義務化で求められるばい菌に対する知識】

食中毒事故の発生原因の多くを占める「ばい菌」についての理解を深めることは、HACCP義務化で求められている従業員教育のメインテーマとも言えます。
専門的な知識というよりも、私達の身近に住んでいる「ばい菌」達の生態を知り、正しい知識を効果的な食中毒予防とHACCPに役立てましょう。

【ステップ4:身の回りのばい菌を知る】

今回のステップ4は、食中毒事故の原因のうち対部分を占める「ばい菌」について学びます。
「敵を知り。己を知れば百戦危うからず」と昔の偉い人が言いましたが、まさにその通りです。
ばい菌の特性から生き方や増え方・事前に見つける方法まで、食中毒の敵となるばい菌について詳しく紹介します。

食中毒を防ぐには、ばい菌(微生物)を知ることが大切

実は食中毒の原因の約半分(46%)は、ばい菌が原因となって引き起こされています。そのため、安全な食品を作るためにばい菌のことをしっかりと理解し、食中毒を引き起こすばい菌がついていない食品を作る必要があります。

ばい菌(微生物)ってどんなもの

では、ばい菌とはどのようなものかというとばい菌と一言でいってもさまざまな種類のものがあり、有用なものもいれば1割程度の細菌は食中毒や伝染病などを引き起こす有害なものとなっています。微生物の種類は4種類で「原生生物類」「真菌類(カビ)」「細菌類」「ウイル類」がありますが、このうち「真菌類(カビ)」「細菌類」「ウイルス類」が食中毒の原因となっています。

細菌の特徴を理解しよう

細菌という言葉を聞いたことはあっても、どのようなものなのかいまいちよくわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。細菌の中でも厄介なのが芽胞菌で生育に適さない環境になると芽胞という殻を作り、100℃になっても死ななくなってしまいます。

細菌の生き方

押さえておかなければいけないのは、細菌の生き方と増え方です。細菌は基本的には栄養細胞の状態で2つに分かれることを繰り返し、どんどん増殖していきます。

細菌はどんな条件でも増殖するわけではなく、「温度・水分・栄養分」の3つの条件が揃うことで増殖していきます。

細菌が増える3つの条件

①温度

②水分

③栄養素

1つ奪うと、増殖は「ゆっくりに」、2つ奪うと、増殖は「止まる」。3つ奪うとゆるやかに「減少」します。

3つの条件をすべて奪うと細菌は死に、1つでも欠けると増殖スピードは弱まります。

例えば器具をしっかり洗浄すると温度と水分は残りますが栄養分が無くなりますし、冷蔵保管すると水分と栄養素はありますが温度がないので増えにくくなります。「温度・水分・栄養分」の一つでも奪うとばい菌は増えなくなるということを頭に入れておけば、管理もしやすくなるでしょう。

細菌の増え方

 細菌は右肩上がりに増えていくわけではなく、誘導期と呼ばれる最初の時期はゆっくりしか増えていきません。しかし、対数増殖期と呼ばれる時期に入ると、一気に増えていき誘導期と同じ時間でも数千万倍にまで増えてしまいます。その後ピークまで達すると増えなくなり、死滅していくという形になります。そのため、安全な食品を提供するためには、対数増殖期に入ることがないように温度管理や期限管理をしっかり行うことが何より重要になってきます。

カビの特徴を理解しよう

続いて、カビの特徴も確認していきましょう。
カビは真菌と呼ばれていて、真菌類は空中・土壌中・水中などのあらゆるところに生息しています。

真菌を大きく分けると「糸状菌」「酵母」「担子菌」の3つに分類できます。糸状菌はいわゆるカビで、食用の場合は麹と呼ばれます。 酵母は食用醗酵の時にも使われますが、カビっぽくなる種類もいます。担子菌はきのこ類で、しいたけや松茸・しめじも真菌類に分類されます。

カビの生き方

カビは、一般的に熱や乾燥に弱いという特徴を持っています。

低温でもカビは生えますが、絶対に酸素が必要です。

つまり、カビを抑制するには、酸素と水分を奪うことが重要になります。
カビが生えてトラブルになっている製品には、酸素を通さない包材と脱酸素剤を使用することで、製品から「酸素」を奪うことができ、ごくわずかに混入するカビの増殖を防止することができます。
カビはどのような食品にでも生えるわけではなく、生える食品を選びます。
そして、食品汚染したカビが全てカビ毒を産生するとは限らないため、必ずしも有害なものになるわけではありませんが、消費者の信頼は大きく失われます。

カビと酵母の増え方

カビはたくさんの胞子をばらまいて増えます。

自社の工場でカビを発見した場合は胞子をばら撒いてどんどん増殖していくということをしっかり認識し、対策を行っていきましょう。また、酵母は、カビと異なり発芽によって増えていきます。

ウイルスの生き方と増え方

最後に、ウイルスの生き方と増え方を確認していきましょう。

ウイルスは非常に小さく、ノロウイルスを例に挙げるとばい菌とは30~100倍も大きさが異なります。

「非常に小さい」ということが、衛生管理する際に厄介な問題を引き起こします。

 なぜ、近年、ノロウイルスが患者数別食中毒原因の1位であったかというと、ノロウイルスの大きさが非常に小さく、糞便にとてもたくさんのウイルス量が含まれていることが一つの原因として挙げられます。

 非常に小さいといわれてもあまりピンと来ないかもしれませんが、ノロウイルスは手の指紋に3,000個も並べられる小ささです。人間と比較してみると5,000万倍ほど大きさが異なります。
 5,000万倍とは人間と地球ぐらいの大きさの違いがあり、ウイルスにとって人間は頭が地球ほどの大きさを持った人というわけです。これほどの大きさがあると、頭の中に60億ぐらいのウイルスがいても不思議ではありません。

 ちなみに、ノロウイルスは10~100個で感染すると言われていて、糞便が数gあれば日本国民全員を感染させる量のウイルスが含まれていることになります。

ウイルスの生き方・増え方

ウイルスは人間の手を乗り物として移動し、自分の好きな細胞に取り付いていきます。

例えば、ノロウイルスはヒトの腸管内の細胞にしか取り付きませんし、インフルエンザウイルスは人の喉の細胞にしかつきません。
自分の好きな細胞に取り付くためにドアノブなどに張り付いておき、人の手を介して好きなものを見つければピタッとくっついて中に入ってきます。

ウイルスは食べ物や食器についても増えるわけではなく、留まるだけです。
そのため、しっかり落として消毒もすれば死滅させることができます。

ウイルス対策としてはまずは、手を介して「持ち込まない」「拡げない」ということが大切です。
そして、食べ物や食器に「つけない」、ついたものに関しては「やっつける」ということが大事になります。

最近はコロナウイルスの影響で大変な時期が続いていますが、手洗いや消毒を徹底したことも影響したと考えられ、2020年は沖縄県内のノロウイルス食中毒の発生件数は0件でした。

このようにノロウィルスは、しっかりと対策をすれば防ぐことが可能です。ウイルスを小さくてたくさんいるということを認識し、「持ち込まない」「拡げない」「やっつける」を心がけて対処していきましょう。

ばい菌(微生物)を「事前に」見つける

これまでこのコラムでは、HACCP義務化の教育の一環として、「ばい菌」について勉強してきました。

そして、HACCP義務化の目的は、食中毒の「予防」つまり、問題のある食品の出荷を未然に防ぐ仕組みをつくることです。 HACCPの目的については、ステップ1を参照しましょう。

食中毒の「予防」のための具体的取組み

では、食中毒を予防するためには何をしないといけないかというと、次の2点が大事にります。

1.自分の作っている食品の重要な食中毒原因を前もって調べる

2.食中毒の原因を減らすためにどのように管理するのかを決める

具体的に何をすればいいのか、さらに詳しく見ていきましょう。

自分の作っている食品の重要な食中毒原因を前もって調べる

食中毒を予防するための一つ目の大事なポイントは、自分の作っている食品の重要な食中毒原因を前もって調べることです。食品の食中毒原因を把握するには、原材料にどのようなばい菌が含まれているのか調べていく必要があります。食品は原材料によって作られるため、原材料が持っているばい菌が食品の中に入り込み食中毒を引き起こしているケースが多くなっています。食中毒菌については制限なく調べても答えは出ないので、基本的には次の3つの方法で調べてください。

1. 文献や食中毒統計

どのような原材料を使うとどのような食中毒が起きたのか、文献や厚労省のホームページなどで事例が公開されているので調べてみてください。

2. 実際の検査

実際に自分が使っている原材料を検査に出して、食中毒菌がいるか調べます。

3. 国や公的機関からの情報

国や保健所などの公的機関からどのような食材でどのような事故が起きているのか情報が出されているので参考にし、自分の業種業態ではどのような食中毒原因があるのか把握しておくことが大切です。

以前は、厚生労働省の通達として、各種の衛生規範が出されていましたが、現在はHACCP制度化によりその役割を終え、廃止されています。
衛生規範自体は廃止されましたが、その管理方法を決める科学的合理的な根拠として参考にすることは問題ないと考えられていることから、皆さんの食中毒原因を調べその管理方法を決める際に役立てる事ができます。

管理方法を決める

自分が気をつけるべき食中毒原因が理解できたら、管理方法を決めていきましょう。管理方法については、次の4点を参考に考えてみてください。

・食中毒予防3原則

・科学的根拠

・実際の検査

・手引書の活用

小規模事業社にとっては少しハードルが高いかもしれませんが、手引きを読めば重要な食中毒原因や管理方法を理解することができます。手引きをしっかり確認して、食中毒の予防に努めましょう。

厚労省の手引はこちらから

また、食材ごとの重要な食中毒原因と管理方法を一覧表にまとめたので、ぜひ参考にしてください。こちらに記されている食中毒原因が全てではありませんが、9割方はカバーできるようになっています。

一覧表は下記からダウンロードいただけます。

まとめ

食中毒を防ぐためには食中毒を引き起こす原因となるばい菌の特性を正しく理解し、どのような食中毒事故が起こるのかしっかり把握しておくことが大切です。そして、原因の把握ができたら、適切な管理を行い食中毒の防止に努めましょう。対策が難しいと感じられる方もいるかもしれませんが、対策の手助けをしてくれる手引書などもあるので、参考にしながらしっかり管理を行ってください。