【食中毒の加害者にならないために必要なこととは?】

食品を扱う以上、誰にでも食中毒の加害者になってしまうリスクは存在しています。しかし、そのリスクは日々の心がけで最小限に抑えることが可能です。

今回は、食中毒の加害者にならないために、具体的にどのような行動を取るべきなのか?

正しい行動を起こすためには、正しい知識が必要です。一緒に勉強していきましょう!

【ステップ2:食中毒の加害者にならない】

前回のステップ1では、主に「心構え」についてお伝えしました。

食中毒を引き起こすことによるリスクについて理解いただいた後は、「食中毒の加害者にならないために、一体自分が何をするべきなのかを知る」必要があります。

食中毒の「加害者」とは

食品を提供する側は食中毒の加害者になることもありますし、食品を提供される側は食中毒の被害者になることもあります。

食中毒における加害者と被害者は表裏一体であり、どちらのことも考えていかなければならないのです。

食品を提供する側には、ついついそのことを忘れ、「自分が大丈夫だから、他の人も大丈夫だろう」と安易な考えを持って食品を提供している人がいるかもしれません。

しかし、食品を提供される側は、赤ちゃんかもしれませんし、長い闘病生活を終えて退院したばかりの人かもしれません。

そのような人たちに対して、「自分は食べても大丈夫だったから、遠慮なく食べてください」と言えるでしょうか。

自分中心で物事を考えてしまう人は、食中毒の加害者になってしまう可能性は極めて高いです。

自分の子どもや孫、おじいちゃん、おばあちゃんなどといった「自分にとって大事な人に食べさせるもの」と考えると、考え方も変わってくるのではないかと思います。

食中毒の加害者にならないために学ぶべき3つのこと

これらを踏まえて、このステップで学ぶことは以下の3点となります。

「食中毒の加害者」にならないために学ぶべき3つのこと

個人の衛生管理

正しい手洗いの方法

ヒヤリハットを共有する

それでは、順番にレッスンを学んでいきましょう!

個人の衛生管理

食中毒というのは、皆さん一人一人が「自分は加害者になりたくない」と意識すれば、食中毒が起こる可能性は低くなります。

しかし、実際に可能性を下げるためには、考えることだけでなく、行動に移していかなければなりません。

具体的な行動としては、以下の4つ挙げられます。

個人衛生の4つのルール

①身体の異常は必ず申し出ること。

②決められた清潔な衣服と履物を着用すること。

③清潔な行動を心掛け、ルールを守ること。

④決められたタイミングで手を洗うこと。

それではそれぞれの項目について、詳しくご紹介していきます。

【①身体の異常は必ず申し出ること】

日々の体調は、「モーニングチェック表」などに記入していくかと思います。

嘘をついてしまってはチェックの意味がありませんので、正直に記入するようにしましょう。

風邪みたいな症状になる食中毒もありますので、「ただの風邪だから」などといった油断は禁物です。

また、手に傷がある時には、ブドウ球菌がいる恐れがあるので、そのままにせず必ず手当てをして手袋をしましょう。

特に消化器症状(下痢や嘔吐)がある場合には、ノロウイルスの懸念がありますので、食品に絶対に触らないようにしましょう!

【②決められた清潔な衣服と履物を着用すること】

衣服や履物は作業場の至る所に触れる可能性があります。

衣服とは、白衣やコック服が該当しますが、このような作業服は食品や加工場を汚さないために着用するものです。

一般的な作業服は、作業服の中に来ている衣服を汚さないようにするために着用しますが、厨房で切る衣服は目的が逆になっていますので注意してください。

皆さんが作業する時に着用している衣服と、医者が着床している衣服は同じであると認識しましょう!

従って、白衣が清潔であることは、最低条件であると言えますね。

【③清潔な行動を心掛け、ルールを守ること】

清潔な行動とは、毎日お風呂に入ったり、爪を短くしたり、体毛の処理をしたり、日々のケアとなります。

また、厨房に入る時にはアクセサリーを外す、飲食や喫煙は決められた場所に限定するなど、日々の習慣に気を付けましょう。

間違っても、加工場には自分の物は持ち込まないようにしてくださいね。

せっかく掃除したり、殺菌したりして加工場を清潔にしても、努力が無駄になってしまいます。

【④決められたタイミングで手を洗うこと】

決められたタイミングとは、厨房に入る時はもちろん、特定の食材を扱ったり、器具を使ったりと手を洗わなければならないタイミングがあります。

しっかりと決められた洗い方を実施して、食中毒を防ぎましょう!

正しい手洗いについては、次のレッスンで詳しく解説します。

正しい手洗いの方法

「手洗い」はいつも様々な場面で実践して頂いていると思いますが、「手洗い」は言うまでもなく食品衛生において最も重要であり、食品衛生の基本とも言われています。

「手洗い」は安全な食品を作るための意識が最も表れる場面ですが、日常生活における「手洗い」と安全な食品を作るための「手洗い」は別物であるという認識はしっかり持っているでしょうか?

「自分はしっかりとできている」と自信のある方であっても、この認識ができていなければ非常に危険です。

それぞれの手洗いは手順が全然違いますから、かかる時間も回数も全く異なるのです!

このレッスンで「プロの手洗い」をしっかりと身につけて頂ければと思います。

【「手洗い」はいつ、どんな場面でおこなうのか?】

「手洗い」とは、手に付着したバイ菌を洗い流すためにおこないますので、「手洗い」とは基本的にバイ菌が手に付いてしまうような行動の後におこなうのがスタンダードだと言えます。

「手洗い」が必要となる場面は、以下の6場面となります。

・トイレの後(危険度:特大)

・作業場に入る時や仕事を始める時(危険度:大)

・生肉、生魚、野菜をあつかった後(危険度:大)

・ゴミなど汚れたものをあつかった後(危険度:中、但し触った場合は危険度:大)

・髪の毛や顔に触った後(危険度:小)

・作業の切替時など(危険度:小)

原則として、ここに挙げた6場面においては手を洗う必要がありますが、危険性が高く、つい手洗いを忘れてしまいがちな場面をしっかりと意識することが重要です。

どれ忙しくて急いでいたとしても、これらの場面ではしっかりと手を洗って消毒しなければいけません。

特に、トイレの後や作業場に入る時は危険度を「特大」や「大」としておりますが、これは食中毒の原因第1位である「ノロウイルス」の感染ルートになっているからです…!

ノロウイルスは便から感染するため、感染ルートであるトイレから作業場へ入るタイミングこそ重要なポイントとなっているわけですね。

食中毒における最大の要因はノロウイルスとなっていますが、2020年に新型コロナウイルスの感染拡大となり日本中で手洗いや除菌がおこなわれたことで、ノロウイルス食中毒の発生件数は減りました。

沖縄県に至っては、なんと2020年においてノロウイルス食中毒の発生件数はゼロでした!

このことからも、皆が手を洗ってしっかりと消毒すれば、食中毒が抑えられることが証明されました。

手洗いは今後も継続化させて習慣にしてしまえば、これからも食中毒の発生を抑えることが可能となります。

【正しい「手洗い」には環境を整えることも重要です!】

正しい「手洗い」を実戦していくためには、「手洗い」をするための環境も重要となります。

手洗い場には、爪ブラシや手袋がありますが、管理をしっかりおこなわなければ、十分に役割を果たしてくれません。

爪ブラシは爪やシワの中の汚れを掻き出してくれますが、そのままにしておいてはバイ菌が付着したままになってしまいますし、使い捨て手袋においても食品にバイ菌が付かないようにしてくれるものの着脱の際に触れてしまわないように注意しなければいけません。

手袋には他にもゴム手袋やメッシュ手袋がありますが、それぞれの手袋には役割がありますので、改めて役割を再確認する必要があります。

どのタイミングで手洗いをするのが最適なのか、最も作業場の環境を綺麗に保つことができる方法を模索しなければいけないのです。

くれぐれも、「手袋さえしていれば大丈夫」「爪ブラシを使ったから大丈夫」などといった過信はしないようにしましょう!

【正しい「手洗い」動画はYOUTUBEでチェック!】

正しい「手洗い」をするための手順は、日本食品衛生協会と厚労省が作った動画をチェックするのが一番です。

YOUTUBEで見ることができますので、しっかりと手順を覚えましょう!

手順は全部で11ありますが、これらは空手の型のようなもので、無駄のない洗練された手順となっています。

様々な研究を経て、洗い残しがないように考えられたものですので、まずは手順を守って実践していくと良いでしょう。

どうしても自分の手洗いにはクセがあり、自分では気づかないことが多いです。

しっかり洗えているかどうか第三者機関でチェックをおこない、正しい「手洗い」をマスターしましょう!

【レッスン⑥:ヒヤリハットを共有する】

「ヒヤリハット」というキーワードを聞いたことはありますでしょうか?

「ヒヤリハット」とは傷害のない事故のことを指しており、「結果的に大事に至らなかった事故、起こらずに済んだ事故」のことを指します。

1回の大事故が発生した時、その背景には29回の中事故と300回のヒヤリハットが存在していると言われています。

これはハインリッヒの法則と呼ばれていますね。

言い換えれば、「300回のヒヤリハットを経て、29回の中事故と1回の大事故が起こった」とも言えます。

食中毒の場合、中事故はクレーム、大事故は食中毒事故に該当しますね。

ほとんどの方は食中毒事故を起こしたことはないかと思いますが、そもそも自分が起こした経験がない食中毒事故をどうやって予防すれば良いのか悩んでいる方も多いことでしょう。

ハインリッヒの法則によれば食中毒事故が起きる背景には、29のクレームと300のヒヤリハットが潜んでいるわけですから、ヒヤリハットを半分に減らすことができれば、クレームも半分となり、食中毒事故が起きるリスクも半分となるわけです。

つまり、「ヒヤリハット」をしっかりと把握し、皆で共有して迅速に、そして的確に策を講じることが重要になるのです。

HACCPにおいてもこの「ヒヤリハット」を衛生管理記録に『特記事項』として記録していくことになりますが、記録することで「ヒヤリハット」が皆で共有できるという大きなメリットがあります。

作業場においては、全員がワンマンプレーをするのではなく、個々それぞれが役割を持って業務に励んでいると思います。

作業場で起こる問題というのは、ほとんどが一人だけで解決できるものではないため、「ヒヤリハット」を共有することで問題を早期に解決することができます。

また、問題をオープンにできない環境になってしまうと、隠ぺいや足の引っ張り合いなど職場の人間関係に亀裂が生じてしまう恐れがあります。

見通しの良い職場というのは、問題を皆で共有し、皆で解決できる職場のことです。

HACCPには、良い環境を整えてくれる効果もあるということを覚えておいて頂ければと思います。

具体的な衛生管理計画や食材の取扱い方法、整理整頓などのルールについては、STEP3をご確認ください。