みなさん、「HACCPに沿った衛生管理」の制度化(義務化)が2021年(令和3年)に完全施行になりました。この「HACCPに沿った衛生管理」で、飲食店で何をやらなければいけないかについて、具体例をもとに解説します。

「『HACCP義務化』なんて言われても、それどころじゃないよ」という方にこそ、読んでもらいたいコラムです。

この記事を読んで欲しい人=HACCPやりたくない飲食店オーナー、店長さん

このコラムは、飲食店のオーナーさんや店長さん、そして「HACCPなんてやりたくない」とか「HACCPなんて全く知らない」という人のために書きました。

<このコラムのゴールイメージ>このコラムを最後まで読むことで、下記の目的が達成できます。

1.法律改正で義務化されたHACCPに対応できるようになります。

2.毎日5分間だけ作業してもらうことで、HACCPを実践できるようになります。

3.食中毒を予防して、お客さまに自信を持って美味しい食事を楽しんでいただけるようになります。

皆さんはもしかしたらこのコラムを読んでいるということは「HACCPなんて絶対自分には無理!」と思っているかもしれません。でも安心してください。難しいことを勉強しなくても飲食店でやらなければいけないHACCPを実践できるようになるようにこのコラムを準備しました。

飲食店HACCPの4つのステップ(リンクで記事が開きます)

HACCPでやらなければいけない具体的なことを4つのステップで説明します。必要な部分だけ見ることもできます。目次のようにご利用ください。解らなくなったらこの記事に戻ってきて下さい。

飲食店HACCPの4つのステップ(リンクで記事が開きます)

ステップ1 手引きを見て計画を作る。(衛生管理計画の作成)

ステップ2「毎日○✕をつけてメモ」&ステップ3 「記録と計画を見直す」

ステップ4「④スタッフにやってもらう」

4つのステップをしっかり守って、保健所や公的機関の立ち入りがあった時に立ち入り検査に対応できるような準備をしていただければと思います。

飲食店のHACCP導入 4つのステップ

実際のお店で実践した「具体例」を見たい人は、下記の記事も見てみて下さい。

なぜ、飲食店でHACCPをやらないといけないか

飲食店で「HACCP」をやらなければ行けない理由は下記の3つです。

  • 法律が変わり、HACCPが制度化(義務化)された。
  • 飲食店での事故が食中毒事故全体の約60%なので、リスクが高い。
  • 飲食店でも、「死亡事故」や「重大な後遺症」を起こしてしまう可能性がある。

でも、飲食店の現状はそれどころではないですよね・・・

飲食店の現状とHACCP義務化

現在、飲食店の皆さんは新型コロナウイルスの感染対策で三密を避けなければいけなくなり、客席・客数ともに大きく減って、売り上げと利益の低下に悩まされていることと思います。

そして働くスタッフの皆さんも「もしかしたら自分が感染してしまうのではないか」という不安に日々怯えながら接客をしなければいけないという大変苦しい状況にあると思います。

その上でHACCPをやらないといけないというのでは、正直な気持ちとして「やりたくない」とか、「自分にはできない」と思ってしまうことも、私はやむを得ないことではないかなと思います。

でも安心してください。法律が変わって、私たちがやらなければいけない、取り組まなければいけないHACCPというのは、この苦しい環境でも十分にできる内容となっています。

わかりやすい言葉でいうと、お店の衛生管理を見える化するだけです。

まずはHACCPをやらなくてはいけない理由を理解してもらって、それからHACCPとは何かということを理解して具体的なステップに入っていきましょう。

HACCPをやらなければいけない理由その1(法律改正)

まず、理由1は先ほど申し上げた通り、法律が変わり、HACCPが制度化されたからです。

図2:厚生労働省HP「HACCPに沿った衛生管理の制度化」より抜粋

図2がHACCPの施行スケジュールですけれども、約2年間の周知期間を経て、令和2年6月1日から施行が開始されています。

そして今現在このコラム執筆は令和2年9月に行っていますので、現在は移行期間中、経過措置期間ということになります。

今の現在の状態では、営業者、つまり皆さんは、HACCPに沿った衛生管理の導入を進めていただいて、行政処分等の措置は旧基準に基づき実施、つまり現行の基準を遵守していれば違反とはならないという状況になっています。

そして令和3年、2021年の6月1日からは完全施行となり、営業者の皆さんはHACCPに沿った衛生管理を実施し、食品衛生監視員、これは保健所の職員のことです。保健所の職員は許可の更新時や定期的な立ち入りの検査の時に実施状況を確認していく。

後ほど詳しく説明しますが、小規模事業者等、飲食の皆さんは手引き書に沿って助言・指導を受けしっかりとHACCPを実施していくということになっています。

これだと分かりづらいので、具体例をもってHACCPを制度化がどういうことなのかというお話しをさせていただきたいと思います。

図3:厚生労働省「HACCPに沿った衛生管理の制度化に関するQ&A」より抜粋

図3が厚生労働省のホームページに寄せられた、Q&Aを一部抜粋してきたものです。

厚労省のHACCPに関するQ&Aはこちら

問18、“飲食店がHACCPに沿った衛生管理を実施していない事業者から仕入れた食材を仕様した場合、食品衛生法違反になりますか。”

という質問が寄せられています。これに対する厚生労働省の答えが

“HACCPに沿った衛生管理を行っていない事業者が原材料等を購入したことが直ちに食品衛生法違反となるものではありません。しかしながら、食品の安全性の確保はフードチェーン全体で取り組むこととなりますので、衛生管理計画に沿って信頼できる事業者から仕入れる、受け入れ時の確認を行う等、必要な対応をお願いします。”

というふうになっています。

ちょっと質問の意味を要約すると、例えば「HACCPをやっていないメーカーさんから皆さんが食材を仕入れることって法律違反になるんですか?」ということを聞いているということになります。

買うこと自体は特に法律違反ではないですけれども、やはりHACCPをやっているということは、今までの「HACCPをとる」といわれる、いわゆる品質の問題から「HACCPをやらなければいけない」という法律違反の問題になったということになります。

つまりHACCPをやらないと、食品関係の仕事は堂々とできないということになっています。したがって、皆さんにはHACCPをやっていただいて、堂々と飲食店を運営していっていただきたいというふうに考えています。

HACCPをやらなければいけない理由その2(飲食店のリスクの高さ)

続いて、HACCPをやらなければいけない理由の2、それが飲食店の食中毒事故が多いということです。

図4のグラフをご覧ください。

図4:厚生労働省HP:「飲食店における衛生管理」リーフレットより抜粋

こちら、平成30年の食中毒の発生状況のグラフで、左側が飲食店の事件数ですけれど、一般飲食店による事件数は722件、1年間で起きた日本国内の食中毒の件数のうち、約54.3%を飲食店が占めているということになります。

そして右側の図は患者数です。患者数も49.6%が飲食店を占めているという形になります。

したがって、日本の食中毒の約半分は患者数・事件数ともに飲食店で起きているということになりますので、皆さんが今運営している飲食店というのは、全業種の中で最も食中毒のリスクが高いというふうにいえると思います。

したがって、飲食店こそHACCPをやって、食中毒予防をしないといけないという状況になっているということがHACCPをやる理由の二つ目ということになります。

HACCPをやらなければいけない理由その3(食中毒による重大事故)

そして、飲食店でHACCPをやらなければいけない理由の3が、場合によっては死亡事故や重大な後遺症を起こしてしまうというところです。

具体的な食中毒事故の概要を見ながらその理由を話していきたいと思います。

事故の概要、“平成28年3月、兵庫県にて、店舗に来店した親子がとりササミのカンピロバクターによる食中毒を発症。息子(10歳)は快復したが、父親(42歳)はカンピロバクター食中毒が原因と考えられるギランバレー症候群を発症し、四肢の麻痺により日常生活に介助を要するため、後遺障害1級と認定されました。”というニュースが報じられています。

こちらの事故は被害者には子どもがいて、42歳の働きざかりということもあって、損害賠償金が1億円で和解されるということになりました。

後遺障害が1級は簡単に言うと寝たきりです。

私事で恐縮ですが、今、私には小学校3年生の娘がいます。例えば娘と一緒に夜ごはんを焼き鳥屋さんに食べに行って、それで「おいしいね」と言いながら帰ってきたら食中毒になってしまって、それで寝たきりになってしまう。

※画像はイメージです。

娘が悲しんでいる時や、何かうれしいことがあったとしても、自分の手で二度と抱きしめてあげることができないとうふうになるんだったら、なってしまったら、私は正直1億円もらっても和解なんてできないと思います。

食中毒事故というのはこんなふうに本当に悲しい出来事を起こしてしまうというところがあるので、絶対に起こしてはいけないですし、しっかりと予防をしていくということが重要になっていきます。

まとめ

まとめますと、飲食店でHACCPに取り組む理由というのは、

一つ目が、法律が変わり、HACCPが制度化されたということです。

二つ目が、飲食店での食中毒事故が多く、とってもリスクが高い業種だということです。

三つ目(3番目)が、たとえ飲食店であっても食中毒事故起きた場合には死亡事故や重大な後遺症を起こしてしまう可能性があるということです。

この三つをしっかり理解して、私たちはHACCPに取り組んでいく必要があるので、頑張っていきましょう。

この記事内容をYOUTUBEで公開していますのでこちらも御覧ください。


次の記事では、そもそもHACCPとは何なのか?ということを説明します。

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