飲食店で「HACCPをやると起きる変化」というお話しをさせていただきたいと思います。
 前回のコラムで一番高いハードル、④スタッフをやってもらうということに取り組んでいただきました。
 どうですか?できましたでしょうか?今回は、スタッフにヒヤリハットを記録してもらうと起きる変化。
 つまり「HACCP」をやると起きる変化を石垣島の飲食店での具体例をもとにご説明します。

HACCPを実施して、ヒヤリハットを3ヶ月集めてもらいました。
石垣島の「焼肉食べ放題」のお店です。貴重な実践レポートをどうぞ!

HACCPでやることの復習(前回までの復習)

このコラムでは、HACCPの具体的な実施方法として

というお話しをさせていただきました。

これだけ見ると「こんなにたくさんやることがあるのか」と思う方も、もしかしたらいらっしゃるのかもしれないですけど、実際毎日やることはこのステップ2の毎日○✕をつけてメモということだけです。

記録の実践方法は、下記のコラムで復習してください。

そしてこのステップ2については5分もあれば終わります。5分どころか、全く問題がなければただ○をつけるだけであれば30秒もあれば十分終わるという形になっているんです。

大事なのはまずステップ1で今自分のお店でどんなことをやっているんだということを手引を見ながら振り返っていただいて、言葉にして、○✕つけて、ステップ3、1カ月か2週間に1回程度30分もあればいいんでしょうかね、見直してスタッフとみんなで話し合って、ステップ4、スタッフでやってもらえるようにそれぞれが当事者意識を持ってもらえるよう自分自身で書いてもらうような仕組みを作っていくというのが重要になってくると思います。

厚労省「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の手引のページ

衛生管理計画の作り方は、こちらのコラムからどうぞ。

ステップ3で計画を見直していくと、今回の記入例にもあった通り、例えばちょっと原材料の仕入先があまり良くないぞというのがわかったりするわけですから、少しずつお店が良くなっていくということが実現できるということになります。

どうでしょうか?この内容であれば皆さんでもステップを踏んで、しっかりやっていけると思っていただけるような内容になっているのではないかと私は思っています。

新しいことを始めるというのは、大変なことだと思うんですけれども、しっかりとこのステップを踏んでHACCPに取り組んでいただければと思います。

それではHACCPをやり続けるとどうなるかという具体例を示しながらお話しさせていただきたいと思います。

ステップ4が個人的には一番のハードルと感じています。
是非、復習してみて下さい。

HACCPをやると起きる変化

では、6番目のレッスンとしてHACCPをやり続けた結果、起きた変化ということを具体例をもとにお話しさせていただきたいと思います。

具体的なHACCPの実施方法、4ステップというのがステップ1、手引を見て計画を作る。ステップ2、毎日○✕をつけてメモ、ステップ3、計画を見直す、ステップ4、スタッフにやってもらうという話で進めていくということをお話しさせていただきました。

一番重要なのはこの○✕つけてメモを取るということを1日5分やればいいということです。このメモを取るというのが今までやっていなかったことだと思うので、とても大変ですけれども、とてもやっぱりいい効果を生んでいくということがわかります。

先ほど例に出させていただいた沖縄県石垣島の焼き肉店の例、実際の記入例を見ながらお話しをさせていただきたいと思います。

これが10月からスタートして3カ月たって、2月にスタッフに記録してもらった状態のHACCPの記録です。

まず一番最初に見ていただきたいんですけれども、庫内温度の記録の所が、毎日ちゃんと15℃、1℃、-1℃とか温度記録が数字ごとに直っています。

そして“〇〇さんが頭痛で休みました”とか、“2/4、下水ポンプトラブルで2時間排水が遅れず修理完了”みたいなことが書いてあります。そして“2/8、タマネギが傷んでいました、選別して捨てました。”みたいなことが書いてあるわけです。

この記録から見えるのは例えば〇〇さんの目の届きにくい勤務態度が見えるということですし、この整理整頓が進んで食材のロスが減っているというのがわかってきます。そして、“清掃後の水切りが甘いです、朝に乾いていません。”みたいな所で、細かい所まで掃除をするようになっていて、お店がきれいになっているというのが見えてとれますね。

実際のお店もこの3カ月後は見違えるように結構きれいになっていて整理整頓も進んでいるという状況になっていました。

そして下に行って、“トイレで下痢をしている人がいたので、出た後すかさず消毒液を撒いて拭き取りました。”“それは③-③を否にしないとダメ”というふうに書いてありますよね。

これはモザイクで消してあるんですけど、大事なのは筆体が違うというか、書いている人が全部日替わりで違うんです。そして書いてある内容に対しても専門的知識に基づいてスタッフを指導する内容になっている。そしてちゃんと確認者のサインまで入っているということになるんです。

こういうふうに現場の人にヒヤリハットを出してもらう、それに対してアドバイスをしていくというのが、このHACCPの実施内容のいわゆる一つの理想形です。

こういうふうになっていくように、こういうふうな記録を作ってもらえるように日頃からスタッフに声をかけて、一つ二つでも何か不具合があったら書いてねということを書くコミュニケーションツールとして使っていっていくというのがいいことということになります。望む形ということになります。

もちろん皆さんの業務日誌でいろんなことを書いていると思うんですけど、このHACCPをせっかくやるわけですから、法律が変わってしょうがなくやらなくてはいけないというHACCPではあるとは思うんですけれど、こういうふうにちゃんと丁寧にヒヤリハットを拾っていけばお店が本当にきれいになるし、何よりも安心して食中毒予防をして安心してお客さまに召し上がっていただける環境というのが出来上がってくるということになります。

あともう一つ、スタッフが育っていきます。ちゃんとできる人とそうでない人、教育が必要な人というのがわかってくるので、ちゃんとできる人はどんどん褒めて、ちょっと頑張らなくていけない人に対してはちゃんと教育をしてしっかりとやるようにしていってもらえればと思います。

次の記事では、HACCPをやることへの不安として、よくある質問についてお話ししたいと思います。

スタッフそれぞれが、ヒヤリハットを書けるようになっていましたね。このお店では、以前は調理師免許を持っている人に出していた資格手当を、「衛生管理手当」に変更したそうです。良い取り組みだと思います。